理学療法士としての留学① 留学の目的と種類など, Studying abroad as a physiotherapist
オタゴ大学は世界保健機関WHO傘下のIFOMPT認定の修士課程を開設しています。実はこの認定コースはこの記事を書いている今現在日本にありません。これが私が留学を具体的に考えるきっかけになった一番のポイントでした。
| The clock Tower with cherry blossom, A symbol of The University of Otago |
理学療法分野において留学をする場合いくつかの選択肢があります。
①ある一つの治療手技を集中的に勉強するためのコースに参加
②現地で理学療法士として働くために基準として設けられている学位(主に学士)を取得するためのコースを卒業
③大学院に入学し現地で修士(Master)や 博士(Ph.D.)を修了
することなどが一般的ではないでしょうか。
①の特徴としてはある1つの治療体系を徹底的に学ぶのに適しているというところでしょう。あるひとつのアプローチを極める、またはインストラクターを目指しているなどであれば間違いなくこの方法が良いと思います。
例えばPNF。
国際PNF協会(http://www.ipnfa.org/)によると現在も3,6,9ヶ月間で修了するコースが用意されています。以前PNF協会認定インストラクターをされている先生とお話させていただいたことがありますが、授業でひとつのパターンを丸1日ずっと繰り返すこともあったそうです。
※現在はアメリカ入国に必要なH−3ビザの発給がされていないようです。コース受講するにはアメリカ市民権及びグリーンカード、またはアメリカ人の配偶者であること、もしくはF-1 OPT Practical Training Visaを所持しているかが基準のようです。このF−1ビザの取得は一見複雑そうです。私のような日本で専門学校を卒業して留学を目指す場合はこのビザが取得できるかは問い合わせないと分かりませんね。
②の場合は国によって異なりますがオーストラリアや私が今留学しているニュージーランドでは学士、Bachelor of physiotherapyが必要です。免許の互換認定制度もあるのですがこちらはかなり複雑です。これはまた別の機会に。
メリットとしては Health science を基礎から学ぶことができる上により実践的な理学療法を初めから学ぶことができることでしょうか。日本のように国家試験はありませんので卒業認定を受ければその時点でライセンスが発行されるようです。そのため大学が責任を持って学生を指導しなければならないため必然的に卒業判定は厳しくなるとのこと。
③は私が現在所属している修士課程など、学士以上の学位を理学療法学専攻で卒業したい場合に一般的な方法でしょうか。
基礎医学や他専攻の修士・博士を卒業された理学療法士の方は日本におそらくいらっしゃるとは思いますが、理学療法専攻 Master of physiotherapy を修了された方はそう多くはないと思います。さらにIFOMPTの認定を受けている大学が日本にはありません。(現在日本でも認定コース設立に向けて動きがあるようです。)
この点に於いて、修士課程から海外留学をするのはとてもメリットがあると思います。
なぜなら学士レベルよりも実践的な治療手技を学ぶことができるプラクティカルペーパーと批判的思考を徹底して繰り返し習得するためのリサーチペーパーが混在しているところでしょうか。受動的な学習から能動的な学習態度への発展によりおそらく臨床に戻っても高いレベルの治療を最新の知見とエビデンスレエベルを考慮し行うことが可能になると思われます。
IFOMPTに加盟している大学のコース概要を見てみると、多様な治療手技の習得と同時に学術論文をCritical readingにより可能な限り中立の立場で批判できる能力とを同時に発達させることに注力していると言えます。この点についても今後考察したいと思います。
では。
2020年1月追記
理学療法修士課程の数は日本でも増えているようですが、臨床技術を学ぶ単位が含まれているコースは未だ多くはないようです。
オタゴ大学を含むIFOMPT認定の修士課程では臨床技能の単位が2単位、バイオメディカルサイエンスが1単位、選択科目が1単位、修士論文作成に関する単位が2単位必修となっています。修士論文の作成は1セメスターで行い、期間はおよそ4〜5ヶ月程度と非常に短いのですが、論文の質がよければ査読付きのジャーナルに投稿するためさらに質を高めることができます。私の修士論文は担当教員や共著者に恵まれてIFを持つジャーナルにアクセプトされましたが、修士を卒業してからさらに5ヶ月ほど編集作業やクリティカルアプレイザルに時間を費やしました。全てが初めてのことでしたが非常にいい経験になったように思います。
日本で研究に携わっている理学療法士であれば研究分野の専門用語や方法論に精通しているはずなので、英語での論文作成においても負担は少ないかと思います。私はオタゴで初めて研究を始めたので、英語と論文作成方法両方に同時に取り組む必要がありました。振り返ってみると労力的にかなり無理があったように思います。これから留学を検討している方へのアドバイスとしては、研究の手法についてはあらかじめ日本で参考書を購入し勉強しておいた方が良いと思います。そうすれば英語での文章作成により多くの時間を割くことができるのではないでしょうか。修士論文作成については今後詳しく記そうと思います。

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