理学療法士としての留学⑦ 大学院留学先の選択 オセアニア、ニュージーランド
前回はAUT(オークランド工科大学)についてお知らせしました。今回は私が所属しているニュージーランドオタゴ大学について記したいと思います。
そもそもニュージーランドには理学療法学科を持っている大学は2校しかありません。そのため募集人員には限りがありますし狭き門であることは事実だと思います。
しかしこの体制は高い教育レベルを保つためには有利なことでは無いでしょうか。少ない学生を優秀なスタッフで指導するというのは理学療法士の質を保つためには非常に有効だと思います。
さて、オタゴ大学は健康科学分野では非常に有名な大学です。つい最近、理学療法学科創立100周年を迎えたそうです。
School of Physiotherapy |
IFOMPT、オタゴ大学の公式ホームページによると
Master of Physiotherapy (Orthopaedic Manipulative Therapy)がIFOMPTの認定を受けています。
その他にもスポーツ理学療法や鍼、中枢神経系に特化した単位(こちらではPaperと言います。)があり、それぞれの専門性をさらに深めることができるようになっています。
オタゴ大学理学療法学科修士課程には上記の徒手整形理学療法の他に
Master of Physiotherapy (Sports Physiotherapy),
Master of Physiotherapy (Neurorehabilitation)
が履修可能です。修士論文の作成及び研究方法論を省いたPGDip (Postgraduate diploma)も設定されており、それぞれの理学療法士が希望するコースを選択し自分の専門分野をより深く勉強することができると思います。
特にSports physiotherapyの分野は発展が目覚ましく人気も高いため、現地の学生(ニュージーランドの理学療法士)はほとんどがその修士を目指していました。これはスポーツ理学療法修士のコースを修了していることでニュージーランド国内の理学療法士の給料に反映されることが影響しているのでしょう。
もちろんNeurorehabilitationを選択している学生もいましたがかなり少数派でした。入学年ごとに傾向が異なる場合ももちろんあるとは思いますが。
一方留学生の配分で見てみると、3人がOrthopaedic 専攻、残りの1人がスポーツ専攻でした。
そうなんです。私がオタゴ大学に入学し修士課程1年目であるPGDipを始めた年の留学生は私を含めてたった4人。その前年は3人だったそうです。私たちの1つ下の年には5人入ってきました。日本人は私だけです。そして総合評価がB-を下回ると容赦無く落第となります…。
コースは基本的に6単位が必須。1セメスターに2単位の選択が認められているため、最低で1年半かかります。内容は、
PHTY 501 Biomedical Science in Physiotherapy
PHTY 543 Orthopaedic Manipulative Physiotherapy
PHTY 561 Clinical Practice
PHTY 610 Research Methods
PHTY 650 Research Project
が必修の5教科に加えて、
PHTY 548 Acupuncture in Physiotherapy
PHTY 542 Sports Physiotherapy
PHTY 539 Occupational Health Physiotherapy
PHTY 545 Special Topic
Also papers with the following subject codes:
MSME Musculoskeletal Medicine, OCCH Occupational Health,
PAIN Pain Management, PUBH Public Health, REHB Rehabilitation
SPME, Sports Medicine
のうちの1単位を選択科目として選ぶ必要があります。
PHTYは理学療法学科が担当している単位ですが、それ以外はヘルスサイエンス分野だと思います。
私はSports Physiotherapy を選択したため他の単位については情報がありません。おそらくはどの単位を選んでも専門的な学習が可能だと思います。
特徴的なのがAcupuncture(鍼)でしょうか。ニュージーランドでは鍼治療は理学療法士が担当することが多く、社会的認知度も高いです。PGDipでAcupuncture の単位を修了していれば臨床で行うことができるようです。私が臨床実習を行なっていた時、学士卒の理学療法士も鍼治療を行なっていたためDiplomaではなくCertificateでも鍼治療を行うことが可能なのかもしれません。日本では専門学校に通う必要がありますがこちらだと早いですね。もちろん日本国内で鍼治療を行う場合は日本の鍼灸師等国家資格が必要だと思いますが、ニュージーランドで理学療法士を目指す方には非常に良いオプションなのでは無いでしょうか。
以上、オタゴ大学理学療法修士過程のご紹介でした。
追記:2018年3月9日
今現在私はPGDipを無事修了、マスターコースの履修が始まっています。PGDipの授業で出会ったローカルの学生の4人と再会しましたが、そのうちの3人が専攻をSports physiotherapyから私の履修しているOrthopaedic manipulative physiotherapyに変更していました。PGDipが修了した段階でコースチェンジを希望する場合は正式な手続きをホリデー中に行えば変更が可能なようです。インターナショナルの同級生のPTも「知ってたら変えたかったのにー!」と言っていました…。
個人的な感想ですが、
- Master of Physiotherapy (Orthopaedic Manipulative Therapy)を修了することでOMPTとして認定されること
- これまで受けた単位の中で
PHTY 543 Orthopaedic Manipulative Physiotherapy と
PHTY 561 Clinical Practice がとても印象深く理学療法士としてのハンズオンの技術とクリニカルリーズニングに基づいた治療を繰り返し練習、習得することができた
※PHTY543の授業では特別講座としてMWMやSNAGなどで高名なブライアン・マリガン先生、ニュージーランド徒手理学療法の分野では知らない人はいないマイク・モナハン先生から直接コンセプト及び手技を学ぶことができます。理学療法士のレジェンドに直接疑問をぶつけたり、議論をする機会はなかなか得難いと思います。この点については“必修単位その2”で詳しく記したいと思います。
この2点が専攻を変更するに足る十分な動機となったのではないでしょうか。今はそれぞれ遠方からオンラインで授業に参加しているため(マスターコースは留学生以外は全てオンラインで受講可能で時折オンキャンパスの授業を受講)、なかなか会えないのですが、機会があればなぜその決断に至ったのか聞いてみようと思います。
追記:2019年2月6日
日本でOMPTの認定を受けるにはJFOMPTの審査を受ける必要があります。IFOMPTの2018年の資料によると日本では96人の理学療法士がOMPT認定を受けているようです。そしてその多くはKaltenbornのコースを修了された先生だと思われます。今後海外のIFOMPT認定のOMPT養成コースの修了を予定されている方は登録されると良いのではないでしょうか。登録は簡単な書類審査と審査料を支払うだけです。
こんにちは!
返信削除コメント失礼いたします。
現在ニュージーランドで鍼灸師として働いています。
Kojiさんは大学院を卒業したらNZでもPhysiotherapistとして働けるようになるんですか?
そして卒業後はNZで働く予定をしていますか?
こんにちは。
返信削除残念ながら理学療法修士を取得してもNZのライセンスはもらえません。
ニュージーランドで理学療法士として働くのに最も確実な方法は、
理学療法学士 (Bachelor of Physiotherapy)を取得することです。
免許の互換制度もありますが審査は厳しく時間もかかるそうです。
日本の理学療法学科では鑑別診断やAutonomyについて詳しく教えていないと思いますのでこの辺りは致し方ないのではないでしょうか。
詳しくはPhysiotherapy board of New Zealand の規定を確認して見てください。
私も将来的にはNZで働いてみたいです。